SAlchemiastory’s diary

WoFメンバーメインにした創作小説です^^

Wheel of Fortuneー古代都市と神罰者たちー第1章④

「私さ、討伐隊員に向いてないのかな。」

神殿の庭先にロムは座り込み、隣にミトが座っている。2人は士官学校時代からの親友であり、別々の道に進んでからも交遊を続けている。

「あんな酷い状態で殺された人、とても見ていられなかったの。兄貴たちの後を追いかけて討伐隊に入ったけど。私こんなんでやって行けるのかな。」

ロムはいつになく力なく話し続け、ミトは黙って話を聞いた。

「私も同じだよ」

ミトは口を開いた。

「死んだ人たちのこと、まともに見ることできなかった。泣いてる家族に何も言葉をかけることができなくて、どうすればいいのかわからなかった。」

「・・・ミトちゃん。」

「神様に仕え、神の真意を汲み取ること。神の真意にしたがって人を導くことが、聖職者の役目だっておばあちゃんから言われてるけど。私もそんな聖職者になれるのかな?」

「あせることなんてないよ。あんたたちまだ若いんだし。」

身を寄せ合いながら話をする少女2人に、様子を見に来たマーサが声をかけてきた。

「私は討伐隊の大変さは経験したことないから何も言えないけど。ロム、あんたはこれからどんどん強くなっていくんだから大丈夫よ。」

マーサは更に続ける。

「ミト、私もあんたくらいの歳の時はできないことだらけで悩んでた。それでもこの歳までやってこれたんだ。あんたもきっと大丈夫だよ。まあ、まだまだ覚えなきゃいけないことはたくさんあるけどな。」

2人はマーサの話に耳を傾ける。人生経験豊かな年配者から励まされ、少女たちの表情は次第に明るくなってくる。

「そうだね。おばちゃん、ありがとう!」

「そんなことより早くシチュー食べちまいな。冷めてしまうだろ。」

2人は立ち上がりマーサに促され食堂に入った。

 

 「あの化け物達を国都に運ぶと言うのですが。」

ひと仕事終わった後、第7小隊のベテラン勢のソルディ隊長とクラースはテリー伯爵の居館に呼ばれていた。

 「うむ、」

テリーは2人を応接間に通し、3つのグラスにブランデーを注ぎながら続けた。

 「あの化け物たちについていささか気になることがあってな。国の方で調査して貰えないかと思ってな」  

 「ふむ、確かに今まで我々はたくさんの魔物を討伐してきまし、他の領地で新たな魔物が発見された場合は情報が出回るはずです。しかし、あんな獰猛な手口で人を襲う魔物は見たこともないですし、未だ報告例もありません。」

  2人の前にもグラスを置きブランデーをすすりながらテリーは続ける。

 「貴殿たちは、この地の奥に誰も立ち寄らない広大な土地があることを知っているか?」

 「あの、死の荒野のことですか?」

 「ああ。草木すら生えてない、虫一匹寄り付かない。ただ荒れた土地がそこにあるだけ   だ。」

 釈然としない様子の2人を見ながら伯爵はこう切り出した。

 「数年前かの周辺の土地の開拓計画を国が企てた時、あの土地について地質調査が行われたらしいが。そこからあるものが発見された。」

 「あるもの?とは…」

 「古代の魔物の遺体だ。」

 「古代の魔物!?」

 「ああ。正確にいえばミイラ化した化け物である。」

伯爵が言うには、今現存している魔物たちははるか昔の魔物が退化した形態であること、

伯爵自身が当時地質調査の責任者であり、魔物のミイラを発見した当事者であること。ミイラ化した魔物は国都にある本部隊にて今も保管されており、古代学者たちの見解によれば、約2000年前に生息していた魔物であると推測されていること。

そして今日新たに発見した化け物たちの身体的な特徴が古代の魔物と特徴が似ていると言うことだった。ソルデイはブランデーを口につけ、

 「奴らは異常なまでの戦闘能力を持ち、人を殺すことも一切躊躇しない。我々でさえ苦戦する。あんな化け物が大昔から生息して、今まで誰にも目に触れられなかったのに、最近になって目撃されるようになったことはいささか腑に落ちないですな。」

と口を開いた。

 「いずれにしてもあんな化け物がうろつくようになれば公国は大混乱になります。我々でさえ苦戦し、武器を持たない民衆はなす術もない。ここは我々だけではなく、本部隊にも介入してもらう必要があると思います。」クラースも口添えする。

 「今回の魔物については早急に本部に報告書を提出します。奴らの死体も提示すれば、本部隊も何らかの形で動くかもしれません。」

 「ああ、そうだな。」

 そう呟いた伯爵の表情は少し翳りが見えていた。

 2人は挨拶をして居館を後にした。残されたテリーはこう呟いた。

「もし、古文書に書いてあることが本当なら….公国だけでなく、世界規模で大惨事が起こるかも知れん。」