SAlchemiastory’s diary

WoFメンバーメインにした創作小説です^^

Wheel of Fortuneー古代都市と神罰者たちー第1章②

そこには男の惨殺体があった。頭は鈍器で殴られたように陥没しており、手足はあらゆる方向に曲がっていた。そして、腹部を何か鋭いものでえぐられており、臓物を晒していた。

 「ひいっ!!」

目撃者の男は腰を抜かして、その場にへたりこんだ。

 「ロム!!」

真っ青な表情をして近くの藪にうずくまり嗚咽をあげている妹を、アツが追いかける。

  同時にゴンが大声で叫んだ。

  「みんな!!気を付けて!何か近付いてくるよ!」

 ゴンの一声で隊員一斉に手持ちの武器を持ち、全員一ヶ所に固まった。

    

   どん、どん

 

   やがて地響きのような音が聞こえ、獣臭が辺りに立ち込めた。その音の主は2体らしくこちらにどんどん近付いてきた。

   ざわざわ

辺りの木々をかき分けるように、それらは姿を表した。

  「何!?こいつら!?こんなの見たことない!」

  その2体の魔物たちは、今まで見たことがなかった。全身毛むくじゃらで、二本足で歩いており、成人男性よりひとまわり大きい。口から鋭い牙が覗いており、手足には鋭利な爪が映えており、例えるなら大猿の化け物であった。

「あいつらだ!!あいつらがこの人たちを襲ってるのを俺は見たんだ!」

と目撃者は叫んだ。

 「ゴオオオオオオオオオオ」

 突如現れた2体の魔物は彼らの姿を捉えると地面が揺れんとばかりの咆哮を上げ、次の瞬間猛突進してきた。が、その前にソルデイの怒号が響いた。

 「ロム!!しっかりしろ!お前は怪我人たちを守れ!!」

 「はい!」

 弾かれたようにロムは立ち上がり、プロテクションを唱え防衛に努める。

 「気を付けろよ!」

 そう言いながらソルディは大剣を持ち、魔物に切り込んでいく。同時にアツも片手剣をふるい、もう一体に向かっていく。

が、魔物たちは彼らを叩き潰そうとすかさず巨大な拳をふりおろす。

  「うわ!あぶねー」

すんでのところで横をすり抜けた2人が、さっきまでいた場所は拳で地面が陥没していた。

  「許せない」

 トモチは魔物たちへの憎悪が込み上げてくるのを感じた。そして魔杖を持ち風魔法―

フラッシュを唱えた。突如現れた風の刃は魔物たちの体を切りこむ。2体は咆哮はあげたが、致命傷を与えるには至らなかった。

  接近戦は明らかに不可能であり、彼らは遠隔攻撃を仕掛けていく。ソルデイは大剣を地面に叩きつけ地響きをおこす。アツが剣で虚空を斬ると風の刃が2体を襲う。ゴンは弓矢を放ち、キラとトモチは魔法を使って応戦する。

  だがどれだけ魔物たちにダメージを与えてもなかなか倒れない。戦闘が長引けば長引くほど隊員たちの疲弊を招き、不利な状況になりうる。

 「こうなったら、奴らの体力をじわじわ奪っていくか。トモチ、何かいい魔法はあるか?」

 「それなら、コイツらじわじわと火炙りにしていいですか?」

  「ああ、好きにやってくれ。ゴン!油を借りるぞ」

   ソルデイの意図を隊員たちは察した。

  「火が燃え広がる前にここを離れないとですね。」

  「ああ、そうだ。俺が奴らを引き付けておくから、お前らはこの人たちを連れてここから離れろ」

  「それなら俺もやりますよ。隊長ばかりいい格好させませんよ。」

アツが悪戯っぽく申し出る。

   「お前は、ほんと救いようがないな。まあ、万が一ここで死んでも、」

   「神の加護で神殿で生き返りますし」   

  トモチ、アツ、ソルディを残し、一行はその場を離れ、森の外をめざしていく。アツとソルディは、それぞれ武器を持ち構えて魔物たちへ向かっていく。魔物たちは体勢を変えて2人を襲い掛かろうとする。次の瞬間アツとソルディから投げられた小瓶が彼らを直撃し、その拍子に瓶が割れ中身があふれでた。一瞬彼らは怯んだが、再び襲いかかろうとした。

  その瞬間

  「インシネレイション!」

  の詠唱とともに、トモチの魔杖から火柱がほとばしり、2体の魔物に直撃する。同時に2体の魔物は一気に火だるまになり、苦悶の咆哮が辺りに響き渡る。小瓶の中身は油であった。

魔物たちはなおも襲いかかろうとするも、ほとばしる火の勢いに体力が奪われ、やがてもがき苦しみ始めた。

   ふっと、一体が倒れると同時に、近くの木々に引火した。

   「俺たちも逃げるぞ!」

  ソルデイの一声で 3人はすぐさまその場を離れた。

   ゴー、ゴー

  火の勢いは増しており、森全体に火が燃え広がるのは時間の問題であった。

   振り替えってさっきまでの場所を確認すると、燃え広がる木々と、火だるまになり、絶命し横たわった2体の魔物がそこにはいた。 

「よし!火を消してくれ」

  ソルデイからの指示を受け、トモチは大海の記憶を詠唱した。その瞬間、どこからともなく辺りに津波が押し寄せ、燃え広がった火を鎮火していった。