SAlchemiastory’s diary

WoFメンバーメインにした創作小説です^^

Wheel of Fortune 〜古代都市と神罰者たち〜第2章②

「はるか昔、この大陸にはダーマデウス帝国がありまして、神の時代とともに長きにわたり栄えておりました。時の王様とお妃様の間には女の子が生まれて、アリスと名付けられ大切に育てられました。」

神殿の大広間、ミトが絵本を広げて街の子供達に読み聞かせをしている。

「アリス王女はとても賢く,魔法をたくさん勉強してきましたが、ただ一つ難しい魔法だけは使うことができませんでした。

そんなある日、イラブと名乗る悪い神様がたくさんの悪人を連れて帝国を襲いました。そして王様とお妃様を殺してしまい、帝国を自分のものにしてしまいました。アリスは家来とともに命からがら逃げ出し、帝国から脱出しました。

両親を殺されたアリスはイラブを許すことができません。そんなアリスに女神ミレイユはお告げをしました。アリスには神々が味方になりイラブを退治することができますでしょう、と。」

物語の展開に子供達が興味津々になってるいるようだ。

「やがてアリスは成長し、難しい魔法も使えるようになり、いよいよイラブに戦いを挑みました。イラブのせいで世界は荒れ果てため、人々はアリスの勝利を祈りました。

しかしイラブもまた強い魔法を使うためなかなか勝つことができません。

するとそこへ女神ミレイユが現れ、アリスに力を与えました。

女神の力を借り、アリスはとうとうイラブをやっつけることができました。

こうして世界には平和が訪れ、人々は幸せに暮しました。」

こうして物語は締めくくられている。このアリス王女物語はもともとこの国に伝わる神話を子供にも分かりやすいように童話という形となっている。普通のお伽話に出てくるお姫様とは違いドレスではなく甲冑を身につけ、悪しき存在を倒していくアリスは子供から大人まで人気がある。

「ミトお姉さん、最後アリス王女はどうなったの?」

女の子からの質問にミトは少し返答に窮した。

なぜならこの物語、アリス王女が最後どうなったか具体的に書かれてないからだ。

ミトはこう答えておいた。

「実はこれについては何も書かれてないのよ。おそらく、読んだ人が色々アリスのことを自由に想像できるように、敢えて触れてないんじゃないかな?」

「ふーん。じゃあ、きっともっと悪いやつを退治に旅に出たんだね!」

「えー?素敵な王子様と結婚して幸せになるんじゃない?」

子供たちが思い思いに楽しそうに想像を膨らませているのを見て、これでよかったのかなと考える。

「そしてここに立っているのは、女神ミレイユの像ですよ。」

ミトは大広間の奥の古い女神を指差して説明する。

すでに年季が入っており所々色が剥げ落ちているが、代々この神殿では女神ミレイユ像を大切にしてきた。

ミトは幼くして両親を亡くし、祖母マーサの元に引き取られトモチと一緒に育てられた。マーサの夫―つまりミトの祖父は権威ある神官であったが、ミトが引き取られる前に風土病で亡くなった。こうしてマーサは夫に代わりこの神殿を統括する神官となった。

トモチは昔から頭が良くたくさんの魔導書を読み,ほぼ独学で魔法を習得してきた。彼女の魔法の才能は年齢とともに開花し、幼い頃から街の頑強な大人とともに魔物の討伐に参加してきた。誰もが彼女は将来魔法専科の学校に進み、ゆくゆくは宮廷魔導士になるものだと思っていたが。

「いつか誰かが魔物たちをやっつけてくれる、勇者が現れる。そんなこと期待してもこの国は安全に暮らせない。」

そう言いながらトモチは士官学校へ進学した。

そこで同期のアツ、キラ、ゴンと出会い、彼らとともに卒業後討伐部隊へ入隊した。

そんなトモチからミトは幼い頃から魔法の手解きを教えてもらっており、彼女も討伐隊員を目指すべく士官学校へ入学した。しかし卒業間際,ミトはふと疑問に思った。

「私がやりたいことって,本当にこれなのかな」

武器を持つこと、魔物に立ち向かうことが怖くないといえば嘘になる。それ以上の理由として、討伐隊員になった自分の未来を思い描くことができなかった。

神殿を訪れる人々の中には、家族を魔物に殺された人、生活に困窮して明日食べるものさえない人、生きる希望を失いかけた人もいた。マーサは親身になって話を聞き、神の言葉を伝えて手を差し伸べてきた。

「私たち出来ることなんて高々知れている。だけど迷える人を導いて生きる気力を与えることはできる。」

マーサから教えられ、これが本当の私の進むべき道なのかも知れないと思った。人々に寄り添い誰をも救える巫女になろうと、ミトは決心を固めた。

それをマーサに伝えた時、少し嬉しそうな表情をした。

「これも天の思し召しだね。あんたはミレイユ様の意思を汲み取る巫女として選ばれたんだよ、名誉なことだ。」

士官学校まで行かせてくれたのに、なんかごめんね。」

そういうミトに、世の中何一つ無駄なことはないとマーサは言った。

「トモチの場合は、あのじゃじゃ馬っぷりは女神様のお眼鏡に叶わなかった。ただそれだけだよ。」

そう言いながら2人で笑い、巫女の修行を続けて今に至る。